「不動産は安全な投資である。一般家庭が借金をして投資することができる唯一の資産であり、最も見返りが高い投資である。(21世紀も)不動産の価格は上昇し続け、その上昇率は90年代のそれを上回るだろう。」
(Fannie Mae CEO Franklin Raines)
「我々のビジネスはアメリカンドリームを売ることだ。」
(Fannie Mae社訓)
人気ボードゲームの「モノポリー」は、1903年のアメリカでその原型が開発された。発案者のElizabeth Philips氏は、少数の地主達が一般市民から家賃を搾取している不平等性な社会の構図を暴くべく、「The Landlords Game」と銘打ってゲームを作った。消費者の嗜好に合わせて改良を重ねた結果、1935年に「モノポリー」が発売された。爆発的なヒットだった。
勝つためのコツは小学生でも知ってる。とにかく土地を買いまくることだ。土地を買い、ストリートを買い、マンションを建て、大富豪になる。これが常套手段だ。そのようにして「モノポリー」という大ヒットゲームは、発案者の思惑とは裏腹に、土地を買うことが賢い投資法であるという強いメッセージをプレーヤーに伝えた。
モノポリーの発売と同時期にルーズベルト政権は「アメリカンドリーム」を開発した。1930年代にFHAやFannie Maeなど、一般家庭が家を購入するために必要なローンを提供する枠組みを開発したことで、アメリカ人にとってマイホームは夢ではなくなった。ルーズベルトは国民に家を持たせることにより、見事に国家の安定を実現させた。
全ては順調だった。第二次世界大戦以降、持ち家比率は40%から60%に上昇し、国民はハッピーだった。治安は良くなり、人々は安心して自分の城に住み、ローンを返済すべくせっせと働いていた。
どこで歯車が狂ったのかは分からない。でも、60年間順調に持ち家比率が上昇している中で、人々は不動産の価格は上昇し続けるものだと思い込み始めた。政府は今までにもまして持ち家比率を高めるための手を打っていた。2002年にブッシュは「我々はアメリカ人全員に家を保有してもらいたい」と声高に宣言した。2005年のアメリカの持ち家比率は70%にまで上昇していた。
そんな中サブプライムローンなるものが生まれた。サブプライム金融界は、何の収入も仕事も資産も持たない人々に高い金利で金を貸して家を買わせた。誰も異論を唱えなかった。ハーバードの名誉教授であるHenry Louis Gates Jr.は、「アメリカの貧困を解決するためには、貧困層に土地を与えることだ」と主張した。
もちろん、収入もない人々がローンを返済できるわけはないのだが、彼らにはウルトラCがあった。返済を迫られたら、自分の家を担保にしてまた借金をして元のローンを返済すれば良いのだ。家の値段は上昇しているので、借りられる額も増えている。住宅価格が上昇しているうちは、この技でローンを返済できた。
しかし、2005年頃に住宅価格の上昇はあっけなく終わった。収入が乏しいサブプライム層は、ローンの返済を迫られてもなすすべもなかった。その頃にはサブプライムローンは証券化され、世界中の金融機関の帳簿の中に地雷のように埋まっていた。証券の元となっているローンがダメになり、証券の価値は激減した。その打撃は誰も想定しえなかったくらい大きく、Lehman Brothersなどの大手証券会社の倒産につながり、そのようにして、アメリカンドリームは世界の悪夢になった。
今回の金融危機は人間の強欲が引き起こしたと良く言われるけど、実は過度な借金をしてマイホームを購入することが善であるというプロパガンダを打ち出した政府が引き起こしたとも言えるのではないだろうか。